2008年04月23日

三郷生活保護裁判 第3回口頭弁論

 更新をサボっておりましたが、行ってきました「三郷生活保護裁判」。この報告だけは続けていきます。

 前回は51席の傍聴席のある、さいたま地裁で一番大きい105法廷だったのですが、今回は41席の101法廷で行われました。傍聴券の抽選には80名ほど集まりました。前回よりも人数が増えており、この裁判への支援が広がっていることを感じます。支援が広がる喜びの反面、傍聴できる可能性が低くなってしまうのが痛いところ。今回の当選確率約50%でしたが、前回に引き続き運良く傍聴することができました。

 前回同様、本題に入る前にいくつかの調整を行ないました。ここで被告側弁護人から驚きの発言が飛び出しました。裁判所での口頭弁論の前には、原告側、被告側双方とも準備書面という文書にて陳述内容を裁判所と相手方に渡しているようです。

 被告(以下三郷市とします)側の準備書面に対し、原告側は「釈明申立書」というものを提出し、準備書面の内容について説明を求めていたようです。準備書面19ページに対し、釈明申立書は13ページになったということです。これは原告側が小手先のテクニックとして行なったわけではなく、三郷市側準備書面があまりにも稚拙であったためです。


例)市外への転居を求められたことを示す病院ケースワーカーの記録について
三郷市側「こちらでケースワーカーに確認したところそのような事実を示すものではない」
 ↑↑↑
原告側「それはいつ、どこで、誰が確認を行なったのか?」

例)葛飾区転居前の保護離脱について
三郷市側「原告に自立の意思があった」
 ↑↑↑
原告側「自立できると判断したのであれば、その判断の基準を示しなさい」



 裁判というのは自らの主張を証明するために理論構築するものと思っていたのですが、三郷市側弁護人はまともな根拠を示さないまま準備書面を作成しているようです。

 さて、長くなりましたが三郷市側弁護人の発言に戻りましょう。裁判長が釈明申立書に対して回答を準備しているかについて確認したところ、釈明申立書の内容に対して「難クセ、揚げ足取りのような内容」と発言したのです。法廷内は騒然です。この三郷市側弁護人の発言に対し原告側弁護人が発言の撤回を求めたところ、今度は「(難クセや揚げ足取りなんて)よくある言葉じゃないですか」と発言。傍聴席だけでなく、裁判長も失笑です。

 前回に引き続き、法廷内に失笑を巻き起こす男。どうやら三郷市側弁護人はとても個性的な方のようです。原告の三郷市は弁護士選定を「ヘタこいたーーー」と思っているかもしれませんね。

 ようやくここから本題。今回の意見陳述のテーマは、「説明義務と助言義務」です。原告側弁護人は社会福祉法、生活保護法などの法解釈、厚労省通達、判例などを根拠に「説明義務と助言義務」について意見陳述を行ないました。(下記参照)

 意見陳述終了後、次回の日程を確認しました。次回は6月25日10時と決まりました。裁判長は今回と同じ101法廷を提案したのですが、原告側弁護人は傍聴希望者が多いことを訴え、105法廷で行なうよう要請しました。さて、どうなりますか。

■三郷生活保護裁判 第4回口頭弁論
日時:2008年6月25日(水) 10:00〜
場所:さいたま地方裁判所 105法廷
※傍聴券の抽選は9:30から行われると思います。


----------(以下原告側資料をもとに、あめ男が作成)----------

■原告第3準備書面の要旨
三郷市福祉課職員は、
原告らが生活に困窮し要保護状態にあったことを知りながら、原告らに対し、一貫して、生活保護の利用の助言をしなかった。
この行為は、説明義務、助言義務違反であり、これも国家賠償法第1条第1項の違反、過失を構成する。

■助言義務の根拠
○そもそも福祉事務所は「福祉の専門機関」。一方、福祉事務所に来るのは「専門知識も交渉力も低い」生活困窮者。
⇒これだけでも助言義務が認められて当然。
○社会福祉法に基づく地方公共団体の説明義務
1.同法は「社会福祉の共通的基本事項」を規定。
2.利用者と事業者との実質的な対等性を確保するという同法の主旨は妥当する。
3.同法は地方公共団体にも「必要な措置」を義務づけている。
⇒地方公共団体の行なう事業にも当然に説明義務、助言義務が認められる。
○社会福祉法に基づく福祉事務所の説明義務
『社会福祉法の解説』(社会福祉法令研究会編)より
・福祉事務所は「社会福祉事業の第一線機関」
・求められる機能は「情報提供機能」「セーフティーネット機能」
○生活保護法に基づく福祉事務所の説明義務
1.職権保護の権能
・生活保護を受ける権利の確保
⇒要保護者が進んで申請するよう配慮すべき
やじる要保護者と生活保護制度を結び付けることに最善の努力を払うべき。
2.福祉事務所の相談・助言機能(27条の2新設)
「福祉事務所は、要保護者の生存権を保証しつつ自立を助長するため、必要な助言ができる。」
⇒生存権保証のための助言という主旨から見て、権能の行使は義務的。
○消費者法、民法に基づく福祉事務所の説明義務
・社会福祉法の利用者保護規定
「当事者間の情報量及び交渉力の格差に配慮した消費者契約法の影響」
⇒この格差は福祉事務所と要保護者の間にも存在

■現実の運用上の説明義務の必要性
○「水際作戦」「硫黄島作戦」等、現実には申請権侵害が横行。
⇒生存権が侵害されており、説明義務、助言義務の必要性は極めて大きい。
○北九州餓死事件後の厚労省通達
「申請の意思のある方については、申請手続きの助言指導をされたい」
「相談者に対して扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行ない、保護の申請を諦めさせるようなことがあれば、これも申請権の侵害につながる行為」

■説明義務、助言義務に関する判例等
○平成19年10月9日福岡県知事裁決
「適切な助言を行なうことはもとより、生活保護制度の内容を十分説明の上、保護申請について、適切に教示すべきであった」
○平成17年6月30日大阪高裁裁決
最低限、相談者の相談内容から支給の可能性がある給付の種類及び構成要件の概括的内容を教示する職務上の義務を肯定。

■諸外国の状況
○ドイツ
判例において、信義誠実の原則から公法上の保険関係に基づく付随義務として、説明義務が認められている。
○スウェーデン
社会保障の実施機関である社会委員会に、情報・助言についての責任がある。
⇒外国ではすでに認められている!

■まとめ
三郷市福祉課職員が原告らに対し、生活保護を利用することが可能であったにも関わらず、そのことを知りつつ(または過失により知らず)、原告らが生活保護を利用できることの説明をせず、かつ過酷な生活困窮状態であった原告らの最低限度の生活を回復するために生活保護の利用を助言すべきであったにも関わらず、助言をしなかった違法、過失がある。

----------(以上原告側資料をもとに、あめ男が作成)----------



■関連投稿
三郷市生活保護裁判を支援する会
三郷生活保護国家賠償請求 第2回口頭弁論
三郷生活保護裁判 第2回口頭弁論

■参照サイト
特定非営利活動法人ほっとポット『三郷生活保護裁判〜竹下弁護士〜』
不条理日記『三郷市生活保護裁判第3回口頭弁論(4月23日)』
法学館憲法研究所『三郷生活保護裁判(1)』


posted by あめ男 at 20:10| Comment(2) | TrackBack(1) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
中学の同級生が三郷市の職員でこの件に関わっていると聞いて調べてこちらにお邪魔しました。

原告が最初に三郷市に申請した当時、
生活保護支給の対象の基準になっていたのか
その点がどうも支援者側のホームページを見ても解りません。
一般的に自家用車を所持している状況で基準にならないと判断出来るのでは無いでしょうか?
また、病院は普通は完全看護で奥さんが付き添う必要は無く
働けたのではと客観的考えるのは普通かと思います。
原告の気持ちは解りますが、三郷市職員として働いている立場の人が基準を無視する事は出来ないと思います。
ただ、三郷市の対応にも個人的にはいきどうりを感じます。
Posted by 伊井未来 at 2010年02月02日 23:21
>伊井未来さん

この裁判では生活保護受給の三郷市の判断基準について、実質的には争点になっていないと思います。
なぜなら、一時的とはいえ生活保護は開始されたのですから。
伊井未来さんはご自身の経験から「基準」「普通」を判断されていますが、「原告に対して三郷市は生活保護受給を認めた」のが現実です。

伊井未来さんが感じていらっしゃるように、「三郷市の対応」が適切であったかがこの裁判の争点だと私は思っています。
Posted by あめ男 at 2010年02月03日 21:54
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三郷市生活保護裁判第3回口頭弁論(4月23日)
Excerpt: 4月23日さいたま市地方裁判所にて、三郷市生活保護裁判の第3回口頭弁論が行われた(またしても傍聴できなかったが報告集会に参加した)。遅くなってしまったが大雑把に記す。 ※ この裁判の詳しい情報につい..
Weblog: 不条理日記
Tracked: 2008-05-13 00:33
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